この世とあの世で経験する物事はすべて、自分自身の思いによって作り出された幻である。だが、こうした物事への執着が、さらに知覚を歪めるのだ。執着を捨てよ。そして、物事が実際に存在している通りに観察せよ。誰かに会うときはいつでも、あなたは、慈愛をたたえた微笑むようなまなざしで、彼らにお会いなさい。あなたは、人を傷つけようとする意志や欺こうとする思いをもつことを考えてもいけないのだ。他なるものを曼荼羅の諸尊が姿を変えて現れたものとみなすような、すなわち、あらゆる出来事を、“諸尊が演じるお芝居”であると解するような、あらゆる音をマントラやダラニとして聞くような、あらゆる思いを、空性を理解する智慧と一体化した大楽であるとみるような、純粋な見方を常に保持しなさい。これが密教的な生活の心髄である。 ―ダライラマ七世 ヨーガスクール・カイラス発行 松川慧照エッセイ集⑦より